断裁機 ガイドブック 「断裁のトラブル2」
アンダーカット
積紙の上層部が長く仕上がる現象で、かぶり現象ともいわれます。ナイフが切り進む際にクランプ下の紙を引き出そうとする力から発生するものと積紙の間のエアーによるものとがあります。
クランプ圧力とアンダーカット
ナイフが積紙を切り進む際、片刃のしのぎ面に応力が発生します。この応力はナイフの裏側の紙を引き出そうとして働き、それを阻止するだけのクランプ圧力が無かったときアンダーカットが発生します。また、磨耗した刃先はこの応力を増幅します。
原因としては、刃角度が大きすぎる、クランプ圧力が低すぎる、あるいは均等に加わっていないことが考えられます。紙質に適した刃角度とクランプ圧力を設定したうえで次の3 点に注意をはらうべきです。
(1)断裁の都度、断面のはがしを行う。 はがし……断裁面を手で擦り上げ、断面の膠着をとる。
(2)必ずエアー抜きをする。
(3)刃先の磨耗につれて、紙質の切り替えをする。
部分的アンダーカット
ナイフが紙に突入した際に一旦刃先が後ろに進むが、紙の硬度により垂直方向に戻される現象です。和紙やミューズコットン等、ねばりけの有る紙質で発生します。多くはナイフの切れ味劣化に原因しています。
オーバーカット
積紙の下層部が長く仕上がる現象で、にげ現象ともいわれています。紙の抵抗値がナイフのしのぎ面の負荷より大きい時、刃先がしのぎ面方向に進もうとすることから発生します。化粧断裁で発生し易く、断ち割りではあまり発生しません。さらに、T目とY目ではT目のほうが起き易く、アートコートなどの硬質紙や硬質板紙で多発します。
定規のナイフ食い込み痕が次第に太くなり、極端な場合では、二本のナイフ痕を見ることができます。
(1)紙質に対する刃角度設定及びクランプ圧力設定不適当 紙質に対して刃角度を決め、それにふさわしいクランプ圧力を設定します。
(2)刃先の磨耗 切れ味の低下は様々なトラブルを生みます。紙質の切り替えを怠ってはなりません。
(3)刃先の変形 刃先に発生した曲がり(ダレ)によるものです。ナイフ下降中に積紙が後ろで盛り上がることもあります。切り終わり、クランプが開放されると積紙の端が定規のナイフ刃先痕より手前にあることに気づくでしょう。この場合、刃先の修正以外に手段はありません。
アンダー&オーバーカット
積紙の上層部でアンダーカット、下層部でオーバーカットの状態であり、それぞれ長めに断裁されます。エアーとアンダーカットの現象に、両端化粧断裁時のオーバーカットが加わった際この現象が発生します。
図は、オーバーカットの要素を持ちながらエアー抜きを一切行なわず両端を断裁し、最後にエアーを抜いたものです。
(1)エアー抜き不充分 断裁の都度切断面のはがしとエアー抜きを行ないアンダーカットを防止します。
(2)紙質と刃角度に対するクランプ圧力設定不適当 刃先を垂直に進ませる為に最適のクランプ圧力を設定します。
(3)刃先の磨耗 紙質の切り替えとナイフ交換時期の適切な判断が必要です。
ホロウカット
積紙の中央部を弓状にえぐり出す現象です。クランプ圧力の不足、または紙に加わる圧力が部分的に差がある場合やナイフの磨耗による切れ味劣化や適さない刃角度を原因として発生します。
裁ち割りや送り切り断裁方法は断裁幅が広いため、当現象が起こりやすくなります。最初に小さくしてから仕上げる、突き当て断裁・二度裁ち化粧断裁が望ましいでしょう。
部分的凸カット
紙の抵抗値のバラツキに起因して紙質に適さない刃角度、あるいは刃先の曲がり(ダレ現象)によって発生します。特にアート・コート紙は多量の白土が塗られており非常に高い抵抗値を持っているなど、この現象が発生しやすい性質を持ちます。
刃角度23°ラッピング角度24°に設定し、早期の紙質の切り替えをすることで刃先のダレ現象を防ぐとともに、仕上がりを良くすることができます。
段々カット
軟らかくて薄い紙での発生が多く、ナイフの磨耗による切れ味劣化や適さない刃角度等によるナイフホルダーのブレが原因です。
刃角度23°ラッピング角度24°で研ぎ澄まされたもの、あるいは超微粒子超硬ナイフを使用すると良い結果が得られます。
ねじれカット
枚数の異なる積紙を並べて断裁した時や極端な厚薄を持つ積紙を断裁したときなど、クランプ圧力の極端なバラツキから発生するもので、枚数の少ない側或いは圧力の低い側で発生します。また、ナイフに曲がりが有る場合でも発生します。
中凹&弓カット
ナイフに曲がり(歪み) があったり、クランプ圧力の効果が均一ではない場合に発生します。
(1)クランプ圧力に起因するもの 紙の高さ・厚みが一様でないことが主な原因です。クランプ圧力の効果が及んでいない部分をナイフが引き出しています。クランプ下面にマグネットラバー或いは、フェルトを貼り付け、圧力が均等になるような処置をします。又、ナイフに厚さ方向刃裏の凸状の曲がりが有る場合にも発生します。
(2)ナイフの曲がりに起因するもの 曲がったナイフでは紙をまっすぐに切ることはできません。図はナイフに厚さ方向の曲がりで、刃部及びみね部の刃裏の凹を持つ場合を示しています。断裁機中央で切るとこのような中凹&弓カットになります。重要なのはこのナイフの刃先と左右の横当てとは直角になっていないということです。このナイフを使う限り絶対に直角を生むことはできません。流れ目に逆らって切る場合には状況はさらに悪くなります。対策はナイフの曲がり修正以外にはありません。ただ、一度曲がったナイフはもはや完全修正は期待できません。台金を完全にしても、刃先に残る曲がりは完全に消え去ることは無いからです。刃先に残るわずかな曲がりは波状カットとしてあらわれます。
波状カット
ナイフに曲がりが有る場合や鋭角の刃先が弾性的に前後に動いた場合、あるいは、インキや繊維のかたよりによる厚さのバラツキの為、圧力が全面に加わらなかった場合に発生します。
厚さのバラツキに対してはクランプ下面に厚紙やフェルトを当てたり、マグネットラバーを使用して圧力が均等に加わるようにして対応します。
(1)ナイフの曲がり ナイフの修正をします。刃先の極僅かなS 字状の曲がりは、大きな波状カットを生みます。
(2)刃先が弾性的に前後に動く 刃角度が紙質に対して小さすぎます。刃角度を大きい角度に修正するか、超微粒子超硬ナイフの使用或いは、二度裁ちを行います。
(3)厚さのバラツキ クランプ下面に厚紙やフェルトを当てたり、マグネットラバーを使用して圧力が均等に加わるようにします。
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