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断裁機 ガイドブック

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「ナイフ」

ナイフの選び方

断裁機用ナイフは良い切れ味の長期持続性と被断裁物に負けない剛性が求められます。一般にはハイスと超微粒子超硬がよく用いられますが、これらのナイフの持つ特性と被断裁物の種類・性質を考慮し、優れた生産性と被断裁物の高度な仕上がり品質を得るべく選択を行います。

ハイス 高速度工具鋼(SKH2)

現在最も多く使用されている標準的ナイフです。あらゆる紙質に対応しますが硬質紙断裁においてはオーバーカット現象が顕れ易く、刃先角度の設定に注意が必要です。

超微粒子超硬 超微粒子超硬合金

ハイスナイフよりもトラブルカットの発生率が低く、特にアート・コート紙断裁に適しています。購入時の価格や再研磨の費用はハイスよりもはるかに高いのですが耐磨耗性あるいはナイフ交換頻度減少の利点があります。

ハイスナイフ 超微粒子超硬ナイフ
耐磨耗性 超微粒子超硬と比較すれば耐磨耗性は劣る。 紙質によって変化するが、ハイスに対し、10倍前後の耐磨耗性を持つ。
刃先の靭性と剛性 研磨後最初からコート紙等の硬質紙を断裁すると、刃欠けの恐れがあるが、紙質の切り替えによって硬質紙を含めてあらゆる紙質に対応できる。 アート紙・コート紙には最適であるが、強制乾燥された輪転印刷紙断裁では刃欠けに注意が必要である
曲がり 研磨を繰り返し、最終的に40 ミリ前後後退する。その間に変化する刃金と台金の体積比率により曲がりが発生し易い。 後退量は最高15 ミリの為、体積比率の変化は少ない。
切れ味の変化 徐々に低下する。 長期に渉って持続し、或る時急激に低下する。
価格 安価である。 高価である。
研磨 研磨し易い。 耐磨耗性に富むので研磨も難しい。
研磨費用 単価は高いが、耐磨耗性により研磨回数が大幅に減少する。
各部の名称
超微粒子超硬及びハイスナイフの2段刃
Point

図は超微粒子超硬及びハイスナイフの2段刃を示します。
標準ハイスナイフには2番刃角度は造られません。

研磨

しのぎ面をリング砥石で研磨し、刃先に1°~1°30′大きい角度でラッピング研磨を施します。研磨されるナイフには加わる研磨熱により曲がりが発生するおそれがあります。早めの研磨や刃欠けの防止などにより研磨量を増やさないようにする必要があります。

2段研磨
Point

タック紙断裁時における糊の附着を避けるためのテフロン加工が施されたナイフの場合、刃先だけを研磨することがありますがこの場合も2段研磨になります。

刃角度と圧力の設定

通常、紙断裁機用ハイスナイフにおいては上質紙断裁をするにはやや大きいが、アート・コー ト紙も切る事ができる22°を標準としています。紙質を固定して運用できる場合においてのみ、それに適した刃角度を設定します。フィルムやPS板等、硬い材料の場合は、2段研磨が適しています。
超微粒子超硬ナイフは刃角度20°、圧力3t 前後の設定で特殊紙、板紙、感圧紙を除いて全てに対応できます。特殊紙、板紙は刃先が磨耗して他の紙が切れなくなってから断裁します。ただし、軟らかい紙質等で変形や、クランプ痕が発生する場合は減圧します。

刃角度と圧力の設定
Point

図のナイフは垂直に降下しますが、刃先は紙に突入した際、刃角度の二等分線 方向(A 方向)へ進もうとします。しかし、実際はナイフがクランプ方向へ進むことは構造上有り得ない為、紙を引き出す結果になります。そこでクランプにより紙をテーブルに押さえつけて固定する必要があるわけです。このクランプ圧力設定値が低すぎたり、紙の間に大量のエアーがあれば当然滑りやすくなって引き出され易くなります。また、圧力が強すぎれば、多くの空間を持つ柔らかい材料では潰れてしまうでしょうし、硬い材料では刃先が前に押されるオーバーカットという現象が発生します。固定された紙に切り込む刃先に生じる抵抗値と、刃角度が生むしのぎ面と紙との抵抗値が一致したときはじめて刃先はC方向へ進みます。つまり、クランプ圧力と刃角度が、紙の抵抗値とバランスがとれていれば真直ぐに切れるということです。

紙質に適した刃角度とクランプ圧力設定値例(ハイスナイフ基準)
≪標準ラッピング角度は刃角度+1°≫  データ提供:断裁インストラクター 寺田重吉
紙質 紙の種類(紙質に基く分類) 刃角度 クランプ圧力
軟質紙系 ウス用紙・コピー用紙・タイプ用紙・5 リーフ・ライスペーパー・純白ロール・インディアペーパー・小間紙・バンクペーパー 19 ~ 20° 2 ~ 3 t
更・中質紙系 更紙・中質紙・両更クラフト・片艶クラフト・晒クラフト・オリンパス・未晒クラフト・製袋原紙・上質孔版用紙・吸い取り紙・クッションペーパー・画紙・コニーラップ紙・奉書 22° 3 t
上質紙系 荷札用紙・帳簿紙・書籍用紙・ケント紙・PPC用紙・フォーム用紙・色上質紙・ピレーヌDX・イースターDX 18 ~ 19° 3 t
上質紙45 ~ 70kg 22° 3 t
上質紙90kg ~ 22° 3 t
中間紙系 薄模造・TLP・トレーシングペーパー 23° 3 t
硬質紙系 片・両面アート・キャストコート紙・上質コート・中質コート・コーモランド紙・コート紙・アートポスト・純白ロールコート・ぺスグロコート・MLファイバー・ファンシーコーテッドペーパー・ミラーコート 23 ~ 24° 3 ~ 4 t
板紙系 純白ボール・フリューサンド・KV紙・Aマニラ・ブランシュー・アストル・アイボリ・カルメンW・Aカード・テンカラー 24° 3 ~ 4 t
黄板紙・チップ板紙・クラフトボール板紙
特殊紙系 セロファン・グラシン 25°以上 3 t
合成紙系 ユポ・スチレンベース・タイベック 23° 3 t
感圧紙系 上用紙 22° 2 t以下
中用紙(発色防止の為、クッション材を使用してください) 22° 0.8 t ~ 1.2 t
下用紙 22° 3 t
カーボン紙系 22° 2 t
加工紙系 ミューズコットン・アングルカラー・あららぎ・レザック・ペッカ-・ウーぺ・エンボスアート 23° 3 t
あららぎ・クレープN系 22° 0.8 t ~ 1.2 t
和紙系 19° 0.4 t ~ 1.8 t
ナイフの使用限度

研磨を繰り返すにつれ、図のa及びb値は当然小さくなります。特にa値は刃角度によっても変化します。a値が小さくなればナイフ取付盤に紙が接触する度合いが大きくなり、b値が小さくなれば曲がりが発生し易く、裏スキの効果も少なくなります。

ナイフの使用限度
Point

機種と構造によりナイフの使用限度は異なります。RCシリーズ断裁機においてはハイスナイフ、超微粒子超硬とも刃金部の幅b値が新品の状態から約60%磨耗したときを使用限度の目安とします。また、それ以前にa値が障害になるようであればその時点で使用限度と判断するのが妥当でしょう。ただし、著しい曲がりが発生して、それが完全修正できない場合はこの限りではありません。ただちに使用不可とします。

限度を超えて使用した場合は次のような障害が予想されます

(1)しのぎ面側の紙の上層部がナイフ取付盤と接触し、汚れや傷が発生します。
(2)裏スキの最大値に近づく為、刃先とクランプ前面との隙間が大きくなります。同時に実寸も大きくなります。
(3)曲がりが発生し易くなり、断裁精度に影響します。特にS字状の曲がりが発生すると、刃先とクランプ前面とが接触する恐れがあります

紙質と刃先

研ぎ澄まされた刃先は使用されるにつれ必ず磨耗しますが、その磨耗の様子は切られる製品の硬度によって異なります。鋭利な刃先でいきなり硬いものを切れば著しい刃先の欠落が生じますが、ある程度磨耗が進んで刃先が丸くなったナイフでは欠落の程度は極めて少さいものになります。硬度の異なる様々な製品を切らねばならない場合、刃先の磨耗を管理しながら使用することで研磨のコストを下げ、生産性を上げることができます。

紙質と刃先
適した紙質 磨耗により発生する現象
第1期 軟質紙 切断面に膠着の様子が現れる
第2期 中・上質紙 アンダーカット現象
第3期 アート・コート紙 膠着、断面の光り、オーバーカット現象
第4期 板紙 糸状の紙紛発生
Point

グラシン・セロファンは第4期が過ぎてから断裁します。多少のアンダ&オーバーカット現象が発生しますがやむをえません。表のような現象が顕れたとき、紙質の切り替え、あるいはナイフの再研磨をすることになります。しかし、大量の印刷紙断裁や仕事の内容によってはその製品ロットを全て切り終えるまでナイフの取替えをしたくない場合もあります。それは、ナイフが替わることによってそれまで使用していた位置決めデータでは仕上がりサイズが微妙に変化してしまうことがあるからです。ハイスナイフの場合、そのロットが1枚のナイフの能力で処理できる量であるならば始めにナイフを取り替えてから作業に入ります。しかし、もしもそれ以上の量を処理しなければならない場合はナイフの交換と同時にバックゲージ位置決めデータ修正、或いは実寸データ補正で対応しなければなりません。一方、超微粒子超硬ナイフの場合では長期間切れ味が持続するため、この様なケースは起こり難いと考えられます。超微粒子超硬ナイフの優れた特徴がここにあります。

曲がり(歪み)

製造工程で生じるナイフの曲がりは完全に取り除かれて出荷されます。しかし、その後の研磨熱や断裁時の負荷により少しずつ曲がりが生じることがあります。曲がったナイフで真っ直ぐに切る事はできません。極端な曲がりは断裁機への装着を阻むことすらあります。曲がりが見つかった際は研磨師に依頼し修正を試みてください。
超微粒子超硬ナイフは刃角度20°、圧力3t 前後の設定で特殊紙、板紙、感圧紙を除いて全てに対応できます。特殊紙、板紙は刃先が磨耗して他の紙が切れなくなってから断裁します。ただし、軟らかい紙質等で変形や、クランプ痕が発生する場合は減圧します。

曲がり(歪み)
曲がりの有無を調べるには

直定規(ストレートエッジ)を使用する方法が理想ですが、そのような治具の入手は困難かと思われます。簡単に曲がりの有無を知るには断裁機定盤を使います。刃裏を下にして置いた刃先と定盤面との隙間を観察すれば曲がりを見つけることができます。

曲がりの原因には次のものが考えられます

1. 研磨や磨耗による刃金部と台金部の体積比率の変化。
2. 研磨熱
3. 刃先に加わる断裁時の負荷

  • 不適切な刃角度やクランプ圧力での運用
  • 磨耗した刃先での長期運用
  • ダレの発生した刃先での運用
曲がりを防ぐには

1. 適切な刃角度選択とクランプ圧力の設定
2. 充分な注水と管理された砥石による早めの再研磨
※超微粒子超硬ナイフにおいては、磨耗の進行度が極めて遅いため、研磨直前の状態でも長期にわたって使用されることになります。この間、刃先は負荷を受け続けることになります。ナイフ交換時期の適切な判断が必要です。

定規

定規にはいわゆるまな板の役割があります。当然ナイフより硬くては刃が欠けてしまうし、反対に軟らかすぎてはものは切れないでしょう。ハイスや超硬等の刃金の材質に適したものを定盤面と同じ高さに装着する必要があります。一般的には、ハイスには高密度ポリエチレン(グリーン)、超硬には硬質塩化ビニール(ネイビーブルー)の定規が使われます。いずれの定規も周囲温度に影響されて伸縮する性質を持っています。また、収縮という経時変化も発生します。


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